インターン生を採用したはいいものの、どうしたらその学生の強みを引き出せるのか。
インターン生の教育を経験した方なら、誰もが一度は悩んだことがあるでしょう。学生は知識や経験が少ない分、採用者側による徹底した教育が必要です。また、欲を言えば単に「業務を覚えてもらう」だけでなく、それぞれの個性や強みを発揮しながら成長させたいのが本音。
そこで今回お話を伺ったのが、中古自動車部品と再生事業者を仲介する、株式会社パーツワン代表取締役の長倉達也さんです。同社は、創業開始をした2009年から5年間、インターン生の採用は行わず、正社員だけで経営をしていました。しかし、学生を積極的に採用し始めたところ、事業の生産性が向上したそうです。
今回は長倉社長に「優秀な学生を確保するために重要な採用ステップ」と「インターン生の強みを引き出す育成のしかた」について伺いました。
「中途で固めた方が会社は成長する」と思っていたパーツワンが、創業5年後にインターン生を採用し始めた理由
ーーはじめに、インターン生の採用を始めた経緯と、「InfrA」を導入していただいた経緯についてお伺いします。御社は、会社を創業してから5年間は正社員のみで会社を経営されていたんですよね?
長倉達也(以下、長倉):そうなんです。創業開始後しばらくは、インターン生や新卒を採用する気は全くありませんでした。「知識や経験のない学生を採用するより、即戦力となる中途社員でメンバーを構成する方が、会社は早く成長する」と考えていたからです。
しかし次第に、業界経験者が多いなかで仕事をすると、互いに“使い合う”労使関係になってしまうことに気づきました。そうなると、フラットな関係で会社の方針を決めていくことが難しい。当時の私は、当面の会社の業績よりも“長期的な成長を見込める組織作り”と、そのための人材育成に悩んでいました。
ーーそこから、学生を採用しようと思うようになったきっかけは何だったんですか?
長倉:学生の研修を行う会社を見学したことです。見学する前は、学生に対してそこまで期待をしていませんでした。恥ずかしながら、“ゆとり世代”の学生は、研修に来たことに満足して、研修自体は真剣に受けないであろうと思っていたからです。
しかし、その研修を真剣に受けている学生を見て、その考えが覆りました。彼らの眼差しには、知識や経験がゼロに近いからこその“学習意欲”があったんです。「知らない知識や経験を素直に吸収する学生と一緒なら、会社が目指したい道をイチから作り直していけるかもしれない」と思いました。そこで、中途採用へのこだわりをなくし、学生のインターン採用を始めたのが、創業から5年目の年になります。
採用を開始した当初は、他社が開催していた「研修がセットになったインターンプログラム」に講師として参加し、私の講座を受けて気に入ってくれた学生を採用していました。その後、より本格的に採用活動を行いたいと考えていたところ、「 InfrA 」の存在を知ったんです。
ーーただ、御社は「自動車業界」とあって、少し専門性が高いように感じます。実際の就業経験や深い知識がなくても、もともと自動車に興味があり、基礎知識を持っている学生からの応募が多いのではないでしょうか。
長倉:弊社は自動車を中心とした事業を展開しているので、車についての知識がある人や、この業界に近い領域で就業経験を積んだ人が入社すると思いますよね。私も以前はそう思っていました。
ですが、インターン生を採用するにあたり、「自動車業界を志望する人は自動車に興味がある」と決めつけることをやめました。そういった思い込みを持っているうちは、伸びしろのある優秀な人材を取りこぼしてしまうと気づいたからです。
たしかに、その業界の知識や経験がある人は仕事の成果を出すまでに時間がかかりません。その代わりに、経験者だけが集まると同じ価値観の集合体になってしまい、新しい発想が生まれにくくなるデメリットがあります。さらに、知識や経験があることに驕ってしまい、各々が自分のやり方で進めてしまうリスクもあるんです。
ところが、知識も経験もない人はゼロベースからインプットする分、新しい知識や経験を素直に吸収します。長期的に見ると、会社に貢献してくれる人材に成長するのは後者です。
長倉
:弊社の場合、インターン生の採用活動は「InfrA」以外にも複数の採用サイトを利用して行なっています。採用側からすると、常にサイトを閲覧しているわけではないので、学生からのリアクションがあった際は「通知」が頼りです。しかし、なかには通知機能が万全でないサイトもあり、応募があっても気付かないことも少なくありません。
その点、「 InfrA 」は学生からの応募があった際すぐに通知が届くので、スムーズなやりとりができます。
長倉:先ほどの話にもつながりますが、弊社のインターン採用では「業界経験者に勝るほどの成長意欲」を重視しています。
成長意欲の定義は、「自己の成長を通して会社の成長に貢献していく姿勢」です。自己の成長のために会社を“使うだけ”では、以前の弊社と同じ。組織としての発展は望めません。
ただ、その姿勢が学生にあるかを見極めるのは、とても難しいです。
ーーたしかに…。短い時間では“表面的”な姿勢しか見えてこなさそうですよね。
長倉:その通り。ですから、採用する側は学生の本質をなるべく見抜くことのできる面接システムを取り入れることが大切です。
弊社のインターン採用では、一次面接の後にマインドセットとマーケティングの講座を合計3回受けていただきます。その後、最終選考として「パーツワンのインターンシップを通してどういう人材になりたいか」についてプレゼンをしてもらうんです。3日間かけて、本人の成長意欲や吸収力をじっくり見極めていきます。
ーーインターン生1人を採用するために、多くの時間とリソースを投下するのですね。一見コストオーバーしてしまいそうに感じますが、御社は妥当な時間と認識しているのでしょうか。
長倉:会社の利益を長期的な視点で考えれば、優秀な人材は多少の時間をかけてでも確保するべきだと思います。それに、この3日間は会社が学生を判断するだけではなく、学生に「会社を見てもらう期間」とも捉えられます。
以前、日頃の弊社の様子を見学しにいらした方がいました。その方は、仕事中の私を残して平然と帰っていく社員たちを見て「良さそうな会社ですね」と言ってくださったんです。
一方、この様子を見て、「上司を残して部下が帰るなんてとんでもない」と思う応募者もいれば、弊社のこんな様子を見て「この会社で働きたい」、「社風が合う」と感じる学生もいますよね。
採用期間に、本当にこの会社で自分がやりたいことをできるのか、自分にあった社風なのかどうかを、学生ご自身で判断していただきたいと考えています。
長倉:「インターンサミット」のことですね。月に1回、インターン生を主体とした、ビジネス全般の基礎を学ぶ講座を受けてもらっています。講座を通し、「身近な企業の成功要因」、「業績の芳しくない企業が取るべきアプローチ」をテーマに、インターン生で議論を行ってもらうんです。
ーー議論によって、ビジネスの場で戦える知識を身につけていくことができるんですね。
長倉:そうですね。とにかく、インターンをするからには会社の一員として働き、社会に出てから戦える力をつけてほしいと考えています。インターン生には、なるべく社員と同じ視線で会社と向き合ってほしいんです。
そのための取り組みの一つとして、弊社では会社の決算報告会に、インターン生も出席してもらっています。決算報告会は1年の振り返りになりますので、この会社がどんな取り組みをして、それが業績にどう反映しているのかを実際に目にすることができるんです。その際、インターン生自身にも、今期の反省や来期の目標を発表してもらうことで「自分が会社のために何をしたらいいか」を明確にすることができます。
ーー「インターンサミット」は、単にビジネス知識を身に付けるだけではなく、会社の情勢と、インターン生の今後のビジョンのすり合わせも目的としているんですね。他に、インターン生の教育に関して気をつけていることがあれば教えてください。
長倉:弊社が大切にしているのは、「個性を伸ばす」ことです。そして「個性」とは、言い換えれば「自分の考えを自分の言葉で発信する」こと。
学生…特に就活を目の前にした大学3年生は、他人の思想や行動に同化し、個人の良さをわざと消してしまう傾向にあります。しかし、弊社ではそうした「自分を出せない環境」の中にいては、本当の力を発揮できないと考えているんです。周りがどう思っているかを気にせず自分の意見を発信していくことで、組織で活躍できる人材になれます。
ただ、ここで注意しなければいけないのが、“自分の意見”が「世間体をベースにしていないかどうか」です。よく、周囲の反応やイメージを気にして作られた思考を、”本当の自分”と思い込んでしまっている人がいます。しかし、残念ながらその状態では本質的な個人の考えにつながりません。
弊社では「変わっているね」が一番の褒め言葉です。他人と違うからといって、自分を隠すことはありません。その人の個性をしっかりと引き出してあげることで、会社の戦力になってくれると信じています。
ーー自分自身の個性に胸を張れる状態になってはじめて、個の力が発揮されるのですね。ただ、せっかく個の力を発揮できる環境を作っても、長く続けてもらうにはさらなる工夫が必要ですよね。
長倉:そうですね。せっかく力を発揮できる状態であっても、業務に“誇り”を持てなければ長続きしません。
僕は、世の中には「誇りに思える仕事」と「作業としか思えない仕事」があると思っています。これを分けるのは、“教える人”です。単純な作業として教えれば、インターン生は淡々とこなすだけになります。しかし、「自分がその仕事をやる意義」を伝えながら指導すると、どんな業務も誇りを持って取り組んでくれるのです。
現に、弊社のインターン生は誇りを持ちながら仕事に取り組んでいます。経理のインターン生を例に挙げると、ただ数字を追うだけの業務でも、決して作業として片付けません。弊社の経理インターン生は、「先月もこの自動車部品をご購入いただいた方」をピックアップしながら集計してくれます。それは、作業のような業務の中にも「気づき」や「発見」があることを彼らは知っているからです。
インターン生には、“働く”ことを通して「仕事の中にも面白さがある」ことを知ってもらいたいと思っています。誇りを持って仕事に向き合うことは、今まで気づかなかった「新しい自分」を発見することができる。その発見を繰り返して、インターン期間中にどんどん成長していってほしいですね。
長倉:正直に言いますと、弊社のようなベンチャー企業は、インターン生を採用すると面倒ごとが増えると感じています。知識や経験がない分、ゼロから丁寧に教えてあげなければなりませんし、インターン生を教育するためのプログラムが完璧に整っているわけでもありません。しかしながら、その面倒ごとにこそ、企業の成長に欠かせないプラス要素が隠されていると思うんです。
未経験者が持つポテンシャルについてはこれまでお話しした通りですが、それだけではありません。未経験の状態から愛情を持って教育することで、学生にとっても帰属意識が生まれやすく、ロイヤリティが高い組織にもなるんです。
目前の教育コストや採用コストを考えると、インターン生の採用に対して、後ろ向きになる気持ちは良く分かります。ですが、実際に弊社はインターン生が入ったことで生産性が大幅に上がりましたし、会社全体の士気アップにもつながったので、他社様もぜひトライしてほしいですね。